2010年4月16日金曜日

すごいおっさんの話

かつて、ソフトウェアの開発を行うツールは、コンピュータを買うと当然のようについてきました。だってまだその世界にはエクセルもパワーポイントもインターネットエクスプローラーもスーパーマリオもドラクエも、まだ何もなかった時代です。
最初期のパーソナルコンピュータのOSは、OSに開発言語がインテグレートされていて、電源を入れるとすぐにプログラミングが始められました。人々は本屋でベーマガという本を買って、それに載ってるゲームのプログラムリストを自分のパソコンに打ち込んで遊んでみたり、プログラミングの勉強をしてみたりしました。お金が無いか、または境遇に何らかの問題があってパソコンが買えなかった人の場合、段ボールで作ったキーボードのようなもので打ち込むふりをしたりていた様です。
でも、ある程度コンピュータが普及すると、ソフトウェアは自分で作ったり打ち込んだりするのではなく、お店で買ってくるものへと変わりました。すると当然、開発ツールというソフトウェアも、買わなくちゃいけないものになりました。そりゃ当然だね。
ですがここで、金が無いけどプログラミングの能力はあるアメリカのヒッピーのおっさんが、そんな状況に異を唱えます。プログラミングの能力がある人間は選ばれた人間なんだから、そうした種類の人間には、当然ソフトウェア開発ができる状況が与えられるべき、という欲求を、万人受けするよう意図的に能力の話は伏せ、アメリカ人の琴線に訴える『法』の形で布教してゆきました。
世の預言者とか聖人といった種類の皆さんと同じく、おっさんも厳しい現実に直面しています。かなりの長期連載のはずなんですが、基本的に後ろのほうが定位置で、いつ『おっさんの挑戦はまだ始まったばかりだ!』なんて説明文がでかでかと入ることになってしまってもおかしくありませんでした。

おっさん、自分がOh!FMTOWNSという雑誌の記事読んで初めて知ったときは、ルックスは言わずものがな、怪しい長髪ヒゲもじゃのじじいだし、TeXとかいう謎の超使い難いワープロみたいなののCD-ROMを配ってて、郵便振替で寄付を募ってて、なんか訳わかんなかったけど。あんたすげーよ。
ここ数年のうちに買った情報家電のほぼすべてにGPL入ってるし。
ゲイツもジョブスもその他大勢(微妙にラリーエリソンとか)も互いに争ってるけど、おっさんにとっては基本的にそれらすべて敵だし。

というわけで。ストールマンのおっさんもブチ切れているに違いない、最近のAppleの動き。

[MobileHackerz再起動日記: iPhone OS 4にみる、アップル本気の『どくさいスイッチ』]

[敵対的で卑劣――AdobeのエバンジェリストがAppleを批判 - ITmedia News]

なんだけれど、Appleのやってることは別に(長いコンピュータ界隈の歴史の中で)おかしいことではない。
AT&T分割の轍を踏むまいとするアメリカ政府当局も、Appleの製品やサービスを諸手を挙げて受け入れる消費者も、皆、今のところAppleの動向をそれで問題ないと判断し、満足し、異を唱える大きな声がどこにも存在しない。大体、Appleの競争相手であるMicrosoftもGoogleもまたアメリカ企業であり、それぞれがそれぞれにアメリカという国を体現している。それ以外に敵らしい敵がいないので、誰が勝っても根本的に問題が無い。

問題があるとすれば、それは彼らのシーソーゲームではない。
…おっさんくらいしかいないんだよな。

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