2008年5月23日金曜日

VIA製CPUの価格と価値

[日本HP「HP 2133 Mini-Note PC」~5万円台からのWXGA液晶搭載ミニノート]

物の値段には理由があります。
この製品の場合は…VIA。
CPUがVIA社製だから。

確かに、現在のIntel一辺倒、そして白くて角が丸い筐体ばかりってのは本当にウンザリです。
でも、
でも、VIAはいかん。

自作PCの界隈で、Intelがスロット型のPentium2なんていう、コンポーネントの全体的な大型化・パーツの全買換えを要する欠陥品をマーケティングの力でごりごり売りつけだして、ファンもヒートシンクも電源も、みんな一段とデカく五月蠅くなっていっていたあの頃。
あえてK6-2(*)とか、下手すると3とかまで『Socket7(Super7)』で清貧(?)に頑張っていた様な人達にとって、VIAのチップの信頼性は歴史を超える。たとえ10年経ったとしても、僕たちは忘れない。
それしか選択肢がない、純正品というものが存在しないという地獄(**)。

そのVIA製CPUだが、記事内のベンチマークテストによれば、こんな性能らしい。
CPU:Integer
VIA C7M ULV 1.2GHz: 40765
Intel CeleronM353 630MHz: 38270

これが、よく似た構成のよく似た製品であれば、ベンチマークの比較なんてあまり意味ないわけですが。
整数演算の性能で、クロック周波数が約半分のCPUとほぼ同等ですか…これは、分かってて買わないと後々キツいですよ。
浮動小数点演算も、クロック半分のIntelにほぼ同値か負けているということで、Office類はともかくとして、DVD(MPEG2)再生でも精一杯くらいじゃないんでしょうか。AVCだMPEG4だという御時世(***)、歌が残念な歌手が光だ定額だと勧誘し無駄なパケットが飛び交うこの日本では、どうなんだろう。いやOffice類ですら、単体で使わないとキツいってこの記事のライターさんは判断してる…うーむ。

多分、ただ遅いだけで純然たるX86互換CPUではあるはずなので、あのCrusoe(****)ほど酷くはないと思うけど、せめてグラフィクスチップくらいが別で載ってれば…でも、今CPUとしがらみのないグラフィクスチップメーカーって、nVidiaくらいになっちゃったのか。ツマンナイ時代。

とはいえ、小型化に拘り過ぎて価格も電池の持ちもあり得ないことになりそうなWillcom D4なんかよりは、まだ実用性ありそうですが。…なんだかんだいってやっぱり、TypeUが、まだ普通のPCの形をしていた頃のラインが復活、というのが一番嬉しい展開。(あまり関係ないけど)ソニエリ携帯も日本での日本向け生産はやめちゃうというし、どうなんでしょう。


(*) それまでは安定した製品供給のために、Intel社製CPUのセカンドソース製造を請け負っていたAMD社が、今日までCPUメーカーとして生き残るきっかけとなった、代表的な『X86互換CPU』。IntelのPentium~MMX Pentiumの時代に、それらと同じCPUソケット(Socket7)に差し替えて動作する、より高性能なCPU、ということで結構売れた。その時点で当のIntelはPentium2に移行し、Socket7を採用せずファミコンのROMカセットのような形状のSlot1に移行してしまったため、CPUを刺すマザーボード自体も互換CPU陣営で何とかしなければならなくなって、台湾VIA社製のチップセットが、Socket7陣営の事実上の標準に至った。
VIAは後に、K6-2のライバル(…)だった互換CPUメーカーCyrixとWDTを買収(引き抜きだったかも)し、それが今日のC7Mに繋がっている。

(**) K6-2は同時期のIntelCPUを凌いでいた(事になっている)が、OS上でアプリケーションの動作で比較するとそうでもなかったりした。それどころか、周辺機器が動作しないとか、動作が不安定とか。PCはCPUだけで動いているわけではなく、チップセットというものが(CPUと)同じくらい重要であることを、僕たちに教えてくれた。PCの安定動作には、さらにOSというファクターもある。
AMDの汚名(?)は、その後のAthlon投入で挽回されていくことになるが、そのCPU形状は登場当初はスロット型で、ある意味皮肉である。

(***) CPUパワーというのは本当に日進月歩で、信じられないかもしれないが、かつては静止画圧縮規格ファイルフォーマットとして定番化したJPEGファイルも、圧縮のみならずその展開にすら専用ボードの装着が必要な時代があった。確か、Pentiumのひとつ前のi486というCPUくらいの頃、やっと常識的な速度で圧縮・伸長できるようになったはず(解像度・画像サイズによっては、現在でも大変なんだろうけど)。CPU速度だけでなくメモリー容量も現在とは段違いだったとはいえ、ある時期までWebブラウザなんていうソフトウェアは絶対に実現できなかったはず。
ていうかよく、コンピュータの歴史で昔のコンピュータの何千倍の性能とか言うけど、銀行のシステムの話なんかじゃなくて、こういうあたりの例を出せばいいんだよって思う。画像ファイルの表示だけだって大仕事なんです。そりゃauの携帯だって電池のあたりが熱くなりますよ。

(****) Transmeta社というベンチャー企業によって世に問われた、消費電力の低さにフォーカスが絞られたX86互換CPU。電源投入時点でメインメモリの一部をCPUシステムが予約(占有)し、そこで、歴史的経緯で命令長がまちまちだったりと複雑なX86のコード(プログラム)を独自の簡潔・高効率なコードに翻訳して実行するという、ユニークな構造。
OS起動やアプリ起動時が体感できるほど矢鱈遅く、かつ(翻訳が)終わってからもやっぱり遅かった。でも、Intelに本気で極超低消費電力CPUを作る気にさせたという大金星を挙げた、時代の仇花。実はその当時すでに、CPU以上に液晶のバックライトの消費電力のほうが問題だったみたい。

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